防食ライニングでは下地との密着性は重要、大事なのは初期接着力より安定接着の理由

樹脂ライニングは塗装よりも悪環境での耐久性を求められるため、防食性・耐食性を重視するほか超厚膜による環境遮断を行うことにより、塗布対象物の長期保護を目的としています。

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そして、素地とライニング皮膜との密着性は、ライニング性能や耐久性にも大きく左右します。

しっかりした施工は密着に影響する素地調整をもっとも重要視し、弊社のようなライニング材料を扱う会社は、プライマーにこだわりがある理由はこのためです。

ここでは、樹脂ライニングを行う上で、理想的な密着性は初期接着力より安定接着力という内容で詳しく解説していきます。

また、弊社の樹脂ライニング専用のプライマーは、安定接着を目的としたプライマーとなっており、耐食材料と専用プライマーのセットで提案させていただいております。是非参考にしてください。

密着性が耐久性に大きく関係する理由

防食ライニングの塗膜は、腐食要因物質の侵入(透過)によって劣化が始まります。

やがて腐蝕要因物質は素地に到達しますが、それを最大限遅延する機能がライニング塗膜の耐食性であり防食性です。

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しかし腐食性物質が素地に到達したからといって、すぐに塗膜破壊に至るわけではありません。

腐食要因物質が素地に到達してから、塗膜破壊に至るまでの期間を最大限遅延させるには、素地とライニング皮膜との密着性を向上させることであり、そこを担っているプライマーの存在が重要です。

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防食ライニングの密着性に影響する要因

1:下地処理(下地調整)

化学物質を作用させ改質する化成処理もありますが、防食ライニングにおいてはケレンを行う事が主であり一般的です。

ケレンの目的

・下地表面の付着物を取り除くこと
サビ・黒皮(ミルスケール)・油分・水分・塩分・その他異物
コンクリート脆弱層(レイタンス・表面劣化層)
・アンカー(アンカーパターン)形成です。

アンカー(アンカーパターン)形成とは下地表面を荒らすことで凹凸を作り、表面積が増えることで塗膜の密着性をよくします。

ケレンの種類

種類処理した状態処理方法
1種ケレン旧塗膜や錆、黒皮(ミルスケール)を除去し完全に下地を露出させるブラスト・化成処理
2種ケレン錆びや旧塗膜の脆弱層を除去し鉄肌を露出させるが、強固に付着した活膜は残すディスクサンダー・カップワイヤー等の電動工具を中心とした作業
3種ケレン劣化部位の錆や旧塗膜の脆弱層を除去するが、活膜は残すワイヤーブラシ・スクレーパー・ケレン棒等の手工具を中心とした作業
4種ケレン汚れや紛化物を除去するワイヤーブラシ・サンドペーパー等の手工具で作業

ケレンにはブラストによる1種ケレンと、電動工具等で行う2種ケレン、ペーパー等による目粗し程度の3種ケレンといった種類があり、どれを選択するかで密着性に大きく影響があります。

①ブラスト処理による1種ケレン

ブラスト処理とは、粒子状の無数の研磨材を投射し、不純物を除去・除錆しながら対象物の表面をザラザラに粗し、アンカー(アンカーパターン)の形成する処理のことです。

ライニングを行ううえでの下地処理として、一番安定密着が期待でき推奨されます。

②電動工具による2種ケレン

サンダー等の電気工具を主として作業するケレン

③ペーパー等による目粗し3種ケレン

ペーパーなどで表面を荒らす程度の軽度なケレン

2:ライニング皮膜の残留応力(塗膜中のひずみ)

防食ライニング皮膜は、塗布する工程では液状であり、硬化反応することにより固化します。その際の体積収縮(硬化収縮)により、皮膜に引張応力が発生し、それが固化した後にも残留ひずみとして塗膜内に存在しています。

つまり剥がれようとする力を、接着力で抑え込んでいる状態です。

腐食要因物質が塗膜表面から侵入(透過)すると、この残留応力(塗膜中のひずみ)に作用して密着力の低下に影響します。

複合サイクル試験や薬品浸漬試験後に密着力が低下しているのはこのためです。

その他、温度変化によって発生する応力もあります。ライニング皮膜は金属と比べると3~10倍の熱膨張係数があります。

温度や圧力がある状態では、液の侵入(透過)を促進させるため、密着力低下の影響は大きくなります。

つまりここで重視する事は、初期接着力は経年で低下していくという事です。

初期接着力より安定接着が良い理由

施工直後に測定した初期密着力の数値が素晴らしい結果であっても、密着力が低下していくスピードが早く、早期で剥がれてしまえば意味はありません。逆に、塗膜を支える最低限の密着力を最大限長い期間継続できる安定接着力のほうが、防食ライニングの耐久性において良い結果に繋がります。

ほしい密着力は初期のものではなく、経年で劣化していく期間の安定接着力です。

安定接着を重視したプライマーと耐食ライニング材料

ライニング塗膜は高水準な環境遮断を求められ、塗装と比べると超厚膜となるため、塗膜内の残留応力(塗膜内のひずみ)は大きくなります。

樹脂ライニングの耐久性を向上させる安定接着は、ライニング塗膜の残留応力(塗膜中のひずみ)に関係するため、ライニング塗膜中の応力を分散・拡散し緩和する工夫がされている材料であるかが重要です。

残留応力を分散し緩和しているライニング材料

超厚膜にするライニング材料には、塗膜中に無機セラミックやフレークを添加させることにより、塗膜内の応力を分散・拡散し緩和することができるので効果的です。またガラス繊維等で皮膜の補強をする方法もあります。 また、エポキシ樹脂は、樹脂の物性として硬化収縮が少ないのが特徴となっています。

弊社の超厚膜型エポキシライニング材料は、塗膜内に無機セラミックを特殊な方法で大量に配合することにより、応力緩和の工夫がされており、優れた薬品耐性と水中硬化性もある特殊耐食ライニング材料です。

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プライマー

プライマーは安定接着を重視するうえで重要な役割があります。

弊社の考える理想のライニング用プライマーは、硬い剛性のあるものではなく、応力(ひずみ)を吸収できるフレキシブルな性質を理想として開発されています。

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まとめ

ここでは防食ライニングの長期耐久性には、ライニング皮膜の耐食性や防食性はもちろんですが、下地との密着性も大きく影響していることについて解説してきました。

そして下地との密着性においては、下地処理(ケレン)や、塗膜内の残留応力(塗膜中ひずみ)を緩和させる工夫などで、安定接着性を有することができ、防食ライニングの維持が可能になるため、結果的には設備を安全に長期で使用いただけることに繋がります。

弊社の防食ライニング材料のラインナップには、ここで解説した内容を考慮した材料を取り揃えております。

ご質問等ありましたら、お気軽にお問合せください。

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