耐食性樹脂を使用した樹脂モルタルの防蝕ライニング活用術


目次

  1. イントロダクション
  2. 耐食樹脂モルタルとは?
  3. 樹脂モルタルの特徴とメリット
  4. RSテック耐食樹脂モルタルの種類
    • 4-1.RSJ#100エポキシ樹脂モルタル
    • 4-2.RS#200不飽和ポリエステル樹脂モルタル
  5. 耐食樹脂モルタルと通常のモルタルの比較
  6. 耐食樹脂モルタルの適用場所と事例
    • 6-1.化学工場の床材
    • 6-2.耐酸性タンクとライニング
    • 6-3.排水システム
    • 6-4.防液堤のメンテナンス
    • 6-5.工業用フローリング
  7. 施工方法の概要
  8. まとめ

1.イントロダクション

耐食性樹脂を使用した樹脂モルタルは、防蝕ライニングとしての用途で特にその価値を発揮します。プラント設備においては、機器や構造物がさまざまな化学物質に晒されることが多く、これら設備の腐食は重大な問題となります。

防蝕ライニングでは、一般的に1mm~2mm以上の厚膜が求められることで、塗装よりも厚い膜厚構造を実現します。この塗膜厚さは、防蝕、防水、及び物理的なダメージに対する耐久性も向上させますが、過度な厚みは塗膜の割れのリスクをもたらす可能性があります。

特定の用途では数センチメートル単位の厚みを持つ塗膜が求められることがあります。このような場合、耐食性樹脂を用いた樹脂モルタルの使用は、モルタルとしての性能を満たすだけでなく、施工の柔軟性を高め、予期せぬ問題にも対応できる多くのメリットを提供することができます。

弊社は、水中でも硬化する特殊な耐食樹脂を活用して、現場で樹脂パテや樹脂モルタルを製造し、予期せぬ事態にも柔軟に対応できるシステムを紹介しています。詳細は別の記事に記載しています。

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本稿では、当社の耐食性樹脂を用いた樹脂モルタルについてのメリット、適用方法、施工上のポイント、などについて、実践的な観点から詳しく解説します。

2.耐食樹脂モルタルとは?

樹脂モルタルは、樹脂と砂を混ぜて固めた材料で、レジンモルタル、レジモル、樹脂モルなどとも呼ばれています。砂は比較的安価な材料で、それを樹脂に混ぜることで材料全体のコストを削減できると同時に、耐磨耗性も向上させることが可能です。また、耐蝕性については、樹脂への砂の混合によって変化しません。

耐食性樹脂モルタルは、特別に選ばれた耐食性樹脂を基材として製造されるモルタル状の高性能材料です。この材料は、優れた耐久性と保護機能を提供し、建築および工業設備のモルタル用途に加え、効果的な防蝕ライニングソリューションとしても活用されます。

3.樹脂モルタルの特徴とメリット

耐薬品性:

  • 酸、アルカリ、塩、その他の腐食性物質に対して高い耐性を持つ。
  • 化学工場、処理施設、排水システムなど厳しい環境での使用に適している。

樹脂の種類:

  • エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂など、さまざまな耐食樹脂を使用。
  • 樹脂の種類によって、モルタルの特性や適用範囲が異なる。

高い機械的強度:

  • 通常のモルタルよりも靭性があり、高い機械的強度を持つ。
  • 耐荷重性や耐摩耗性に優れている。

適用範囲の広さ:

  • 工業施設の床材、タンクや配管の内壁コーティング、化学的に過酷な環境下での建築材料などに使用される。
  • 防蝕ライニングとモルタルとしての用途を兼ね備えている。

施工性:

  • 施工時には一定の専門知識と技術が必要。
  • 適切な比率での混合、均一な施工、適切な硬化時間の確保が重要。

組成:

  • 基本成分は砂(または他の骨材)と耐食樹脂。
  • 主にエポキシ、ポリエステル、ビニルエステルなどの樹脂が用いられる。

耐久性:

  • 樹脂がモルタル内の隙間を埋め、より密な構造を形成することで、水分の浸透を防ぎ、全体的な耐久性が向上。

耐蝕性:

  • 使用される樹脂の種類によって耐食性が異なるが、砂を混合しても耐食性は損なわれず、防食性も向上。

可塑性:

  • 樹脂の使用により、モルタルはより柔軟性を持ち、割れにくくなる。

長寿命:

  • 長期にわたる耐久性を提供し、構造物の寿命を延ばす。

多目的利用:

  • 滑り止め、修繕、防蝕ライニングなど、幅広い分野で利用されている。

4.RSテック耐食樹脂モルタルの種類

4-1.RSJ#100エポキシ樹脂モルタル

RSJ#100エポキシ樹脂ライニング材料は、その安定した接着力、幅広い化学薬品に対する強固な耐性、水中での確実な硬化性能を備え、厳しい条件下でも信頼性の高い防蝕性能を提供します。このライニング材料に砂を加えることで作成される耐食モルタルは、多様な防蝕要求に対応可能な柔軟性を持ち、過酷な施工環境や悪条件下でもその性能を発揮します。

この耐食モルタルは、無機セラミックを大量に配合されたRSJ#100エポキシ樹脂に、砂を混ぜ合わせて製作され、工業施設、水処理施設、化学工場など、耐蝕性と耐久性が特に求められる環境に最適です。さらに、湿潤環境を含む不測の事態にも対応可能な多様性を持っています。


RSJ#100の水中硬化性能の利点とその解説を含むYouTube動画は、以下のリンクからアクセスできます。

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4-2.RS#200不飽和ポリエステル樹脂モルタル

RS#200不飽和ポリエステルライニング材料は、柔軟性と酸に対する顕著な耐性を兼ね備え、塗膜ストレスへの対応能力を高めるために軟質に設計されています。この高い柔軟性を持つライニング材料に砂を混ぜることで作成される耐食モルタルは、通常のモルタルよりも密度と柔軟性を向上させ、耐久性を高めます。さらに、幅広い薬品耐性を有するビニルエステル樹脂(RS#300)をトップコートに使用することで、非常に高いレベルの多重防蝕性能を提供します。

速硬化性もこの材料の特徴であり、硬化剤の量を調整することで硬化スピードを柔軟にコントロールできます。これにより、迅速な施工が求められる場合にも対応可能です。RS#200とRS#300の組み合わせは、厳しい環境条件下でも最適な保護を実現し、施工の効率性を高めることで、工業施設や化学処理プラントにおける長期的な設備の維持に貢献します。

RS#200軟質不飽和ポリエステル樹脂の活用方法やその他詳細の記事は、以下のリンクからアクセスできます。

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5.耐食樹脂モルタルと通常のモルタルの比較

特性耐食樹脂モルタル通常のモルタル
材料構成耐食樹脂(例:RSJ#100エポキシ、RS#200ポリエステル)を基にしたモルタルセメント、砂、水を基にしたモルタル
耐食性酸、アルカリ、塩などの化学物質に対して高い耐性限定的な耐性、特に化学物質には弱い
強度と耐久性高い強度と耐久性を有する標準的な強度と耐久性
柔軟性樹脂モルタルは柔軟性がある一般的に硬く、柔軟性は低い
適用環境化学的に過酷な環境、工業用途に適している住宅建築、一般的な建設に適している
コスト高価であること比較的安価
施工性専門的な施工技術が必要な場合がある一般的な建設技術で施工可能

6.耐食樹脂モルタルの適用場所と事例

6-1.化学工場の床材

耐食樹脂モルタルは酸、アルカリ、およびその他の化学物質に対する耐性を誇ります。この特性は、厚くて丈夫な塗膜を形成可能にし、高い強度を要求される床の防蝕や補修に理想的な解決策を提供します。さらに、砂の調整により、滑り止め機能を付加することができ、床面の安全性を高めます。清掃が容易なため、化学物質による損傷や汚染から床を効果的に保護し、メンテナンスの手間を軽減します。

塗膜強度が必要とされる場合、ガラス強化繊維を使用し、積層することで厚くて丈夫な塗膜を形成する方法もあります。FRPライニング工法の詳細は以下のリンクからアクセスできます。

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6-2.耐酸性タンクとライニング

耐食樹脂モルタルは、酸、強アルカリといった厳しい条件下で使用されるタンクや槽の内部を腐食や摩耗から守るための最適な解決策を提供します。この高性能材料は、薬品に対する耐性を持つ腐食対策と、強度を必要とする摩耗対策の両方に対応することが可能です。さらに、コンクリートの損傷部分の補修にも使用でき、耐久性向上と打継ぎ接着を同時に達成します。耐食樹脂モルタルを選ぶことで、施設の長期的な保護とメンテナンスコストの削減を実現し、安定した運用を支えます。

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6-3.排水システム

耐食樹脂モルタルは、工業施設の排水槽や排水溝に最適な材料であり、腐食性の高い廃液に対して卓越した耐性を提供します。通常の排水設備が時間の経過と共に損傷を受けやすいのに対し、耐食樹脂モルタルは分厚い塗膜構造を形成することで、設備の長期的な保護と維持を実現します。さらに、防蝕ライニング施工時にコンクリートからの水分浸出を防ぐため、厚い樹脂ライニングを下地に使用することで、問題を効果的に改善します。耐食樹脂モルタルを選択することで、持続可能な設備運用とメンテナンスコストの削減につながり、工業施設の排水システムの信頼性と効率を高めます。

6-4.防液堤のメンテナンス

耐食樹脂モルタルは、防液堤メンテナンスにおけるコンクリートの剥離やヒビ割れなど、既に腐食や劣化が進んだ状況に対して理想的な解決策を提供します。この高品質材料を使用することで、防蝕処理とコンクリートの補修を同時に実施することが可能となり、効率的なメンテナンス作業を実現します。さらに、防食ライニング施工前の不陸調整にも最適であり、耐食性、補修性、そして基材との優れた接着性を兼ね備えています。耐食樹脂モルタルを選択することで、長期的な構造物保護とメンテナンスコストの削減を実現し、信頼性の高い基盤を提供します。長期間にわたる化学的攻撃にも耐えるため、頻繁なメンテナンスや交換の必要性を減少させます。

6-5.工業用フローリング

耐食樹脂モルタルは、機械的摩耗や重機の使用によるダメージに強く、工業用フローリングに最適な選択肢です。一般的なモルタルが持つ硬く脆い性質とは異なり、樹脂モルタルは靭密で弾力性のある構造を実現し、優れた耐久性を提供します。また、骨材を適切に利用することで、滑りにくい表面を作り出し、作業場の安全性を向上させます。このように樹脂モルタルは、耐摩耗性、耐久性、および安全性の向上を同時に実現し、厳しい工業環境における床材としての信頼性を高めます。

耐食樹脂モルタルはこれらの用途において、その耐久性と保護機能により、工業施設の運用コスト削減と安全性の向上に寄与しています。

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7.施工方法の概要

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耐食樹脂モルタルは、耐薬品性、耐久性、そして強度の面で優れた性能を持つ建材です。このモルタルは、特定の耐食樹脂と砂を混合して作成されます。以下に、その作成方法を詳細に説明します。

  1. 材料の準備:
    • 耐食樹脂: エポキシ樹脂(RSJ#100)、ポリエステル樹脂(RS#200)など、適用環境に応じた耐食樹脂を選択します。
    • : 細かい砂を準備します。砂の粒度は最終的なモルタルの質感と強度に影響を与えます
  2. 樹脂と硬化剤の混合:
    • 樹脂とそれに対応する硬化剤を正確な比率で混合します。
    • 混合は均一になるように丁寧に行います。このプロセスは樹脂が適切に硬化するために重要です。
  3. 砂の添加:
    • 混合した樹脂に砂を徐々に加えていきます。樹脂の粘度を調整するため、
    • 砂は樹脂に完全に浸透し、均一な混合物を形成するようにしっかりと混ぜ合わせます。
  4. 混合物の調整:
    • モルタルの粘度や硬さを調整するために、必要に応じて砂の量を調整します。増粘剤も加えて粘度をコントロールします。
    • 現場の条件や使用目的に合わせて、混合物の質感を微調整します。
  5. 施工:
    • 混合したモルタルを施工面に適用します。この際、均一な厚みで施工することが重要です。
    • 機械的な手法や手作業を用いて、表面を平滑に仕上げます。
  6. 硬化と仕上げ:
    • モルタルが硬化するまで適切な時間を待ちます。硬化時間は気温や湿度によって異なります。
    • 硬化後、必要に応じて表面を研磨し、最終的な仕上げを行います

8.まとめ

耐食樹脂モルタルは、酸、アルカリ、およびその他の化学物質に対する高い耐性を持つことで知られ、工業施設や厳しい環境条件下での使用に最適な材料です。このモルタルは、化学的腐食、機械的摩耗、および重量物による影響に強い耐性を提供します。さらに、分厚い塗膜構造により、長期的な保護とメンテナンスの容易さを実現し、防蝕ライニング施工前の不陸調整にも適しています。

耐食樹脂モルタルは靭密で弾力性があり、従来の硬く脆いモルタルと比較して耐久性が向上しています。骨材の利用による滑りにくい表面は、作業場の安全性を高めるのに役立ちます。

コンクリートの補修、防液堤のメンテナンス、工業用フローリングなど、多様な用途でその価値を発揮し、構造物の寿命を延ばし、安全かつ持続可能な運用を支援します。

腐食から大切な設備を守る

(株)RSテックは、防蝕ライニング専用の樹脂販売、防蝕設計、各種防蝕ライニング施工まで、一貫したサービスを提供しています。お客様のニーズに最適な防蝕対策をトータルにサポートいたします。

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