防食ライニングの対象となる躯体の素材は、鉄やコンクリートが一般的ですが、ステンレスや亜鉛メッキといった、接着しにくい材質の躯体も多くあります。
また、客先からの防食ライニングのメンテナンス依頼では、旧塗膜は剥がすが、剥がせないような活膜(生きた塗膜)は残した状態で、全体的に防食ライニングしてもらいたいといった要望も多くあります。
そうなると、旧塗膜に対する接着がどうなのか?という問題がでてきます。
弊社では、このような状況があっても対応できる、様々な接着プライマーを取り扱っております。
ここでは、弊社の万能プライマーであるRS#66プライマーとRS#64プライマーの2種類を紹介いたします。
是非参考にしてください。

樹脂ライニングで接着しにくい素地の代表例
樹脂ライニングで素地が鉄・コンクリート以外で、接着しにくい素材の代表的なものは亜鉛メッキ・ステンレス・旧塗膜の3つです。これらの母材(素地)は、そのまま樹脂ライニングすると、必要な密着性が得られませんので注意が必要です。
1:溶融亜鉛メッキ
溶融亜鉛メッキとは高温で溶かした亜鉛槽の中に製品を浸漬し、表面に亜鉛皮膜を形成させたものをいいます。万が一傷がつくことで鉄素地が暴露されても犠牲防食作用で付近の亜鉛が鉄より早く溶け出すことで母材を保護します。
しかし、想定外に腐食が進行してしまうケースがある場合、すでに亜鉛メッキという防食処理をされている状態の上に、樹脂ライニングをするケースがあります。
亜鉛メッキの上に樹脂ライニングを行う場合、腐蝕している亜鉛メッキに白錆が固着してしまいます。この白錆を完全に除去しないと白錆を巻き込んでライニングしてしまうことになり、必要な密着が得られないことになります。
上に塗るライニング材料との相性で密着しない場合があります。エポキシ塗料で硬化剤にストレートアミンのようなアルカリ性の強いものを使用や、不飽和ポリエステル等は反応して泡を吹きますので塗ってはいけません。
2:ステンレス
ステンレスの場合には、鉄と違って表面に不動態皮膜という薄い膜を作っています。この不動態皮膜のおかげで、内部が空気に触れることはありません。そのため錆びにくいという性質があります。
ステンレスも様々な要因で腐食します
通常は傷がついても表面に保護膜が形成され、錆びにくいステンレスですが、表面に強酸や強アルカリなどが長時間接触した状態にあると錆びてしまうことがあります。
下水や廃水処理施設では、硫化水素の発生による腐食が問題になったりします。
又、海中での環境では局部的な腐食(孔食)や、隙間腐蝕、異種金属腐蝕など、ステンレスを腐食させる要因はあります。
ステンレスの場合、腐食しにくい保護膜(不導体被膜)が形成されることでメリットがありますが、ステンレスの上に樹脂ライニングをする場合には、保護膜(不導体被膜)が形成されることにより密着しにくい状態になります。
3:旧塗膜について
完全に乾燥して経年過ぎた旧塗膜(プラスチック類)は基本的に密着しにくい状態となっています。
塗料の説明書に、「塗装後の養生期間は7日間」や、「塗重ね8h~7日」のような記載があるかと思います。これは、塗ってから7日までは乾燥しているが、まだ塗膜は反応状態にあるということです。7日までならそのまま上に重ね塗りしても問題ないという意味です。逆に7日以降はそのまま上に何か塗っても求める密着がでませんという意味になります。

設備のメンテナンスでは、劣化しているとはいえ防蝕ライニングの旧塗膜を剥がすのは非常に大変です。客先から旧塗膜の活膜(密着に問題無く、保護膜として機能する塗膜)を残した状態での防食ライニングを依頼されるケースが多くあります。
密着しにくい下地を密着できる状態に表面改質するRS#64プライマー
一般的には表面の状態を改善するには、ブラスト処理やリン酸処理(化成処理)等を行いますが、コストがかかるデメリットもあります。化成処理においては専門の工場に持ち込まなければなりません。
防食ライニングにおいては現地施工が主となりますので、弊社ではこのような場合、RS#64プライマーを薄く塗り延ばし、乾拭きをすることによる表面改質を行ってから、樹脂ライニングを行うことで密着性を確保しております。
RS#64プライマーの特長
剥れ易い旧塗膜のエポキシ・ウレタン・ゴム・FRP等の下地でも、表面処理剤であるRS#64プライマーを塗れば、塗膜が強く接着する他、厚膜のライニングを上に塗ることも可能です。
SUSや溶融亜鉛メッキ・FRPなどが母材の場合に表面改質剤として使用することも可能です。
RS#64プライマーの施工手順
- 下地表面に“余計な物”が付いていると下図のような事が起こって剥れてしまいます。RS#64による下地処理(表面改質)をするため、付着物を全て丁寧に除去します。この作業が最も大事な工程となります
- 油脂類は溶剤、水分、付着物はサンダーや高圧洗浄等で除去します。
- 普通の油脂はアセトン、トルエン、キシレン等に溶けるので、これらの溶剤を使います。 アルコールでは油分は除去できないので注意が必要です。
- 汚れが付いていない頑丈で清潔な表面であるなら、溶剤拭きもサンダー掛けも不要です。
- 表面がきれいになったらRS#64を塗布します。RS#64の使用量は20g/㎡以下で十分です。
- 塗布後、必ず乾拭きを行ってください
以上で表面改質は終了です。この上に塗料や樹脂ライニングを行うことができます。
RS#66プライマー
RS#66プライマーは粘着系のプライマーになります。
ステンレス・亜鉛メッキ・旧塗膜など、密着しにくい下地に対して塗装やライニング皮膜を支えるだけの密着を得ることができます。
付着物や脆弱層、油分等を除去しケレンの必要が無く、万能プライマーとして使用できます。1液塗料で扱いやすい作業性があります。
床のライニングで旧塗膜がある場合などには最適です。
作業性の良さが特徴ですが、制限もあります。
- 熱がかかるような環境がある場合は使用できません
- 溶剤型の塗装やライニング材料を上に塗る場合は使用できません。弊社では無溶剤のエポキシ樹脂、RSJ#100との組み合わせで使用しています。
熱や溶剤を使用するような場合には、RS#64プライマーを選択します。
関連記事>>RSJ#100無溶剤特殊エポキシ樹脂ライニングの詳しい解説はこちらから
関連記事>>コンクリート防食RSJ#100エポキシライニング工法の施工方法と注意点についてはこちらから
まとめ
弊社では、このような密着しにくい環境がある防食ライニングを依頼される場合には、状況を確認したうえで、適切な防食仕様を提案させて頂いております。
プライマーのみの販売もいたしますが、事前に素地の状況や上に塗る塗料の詳細などを確認させて頂いております。
お気軽にお問合せください。
お問合せフォーム