樹脂ライニング、接着困難な素材と接着可能にするRS#64とRS#66プライマー

樹脂ライニングとは、素材の表面に樹脂を塗布して、その特性を改良する技術です。しかし、樹脂ライニングの対象となる建築躯体の素材には、一般的な鉄やコンクリートの他に、ステンレスや亜鉛メッキのような接着しにくい材質も含まれます。これらの素材は、樹脂ライニングの適用において注意が必要となります。

また、顧客からのメンテナンス依頼においては、既存の塗膜の一部を剥がし、残りの活膜(生きた塗膜)を保持した状態で新たに樹脂ライニングを施すケースが多々あります。この際、旧塗膜への新しいライニング材の接着性が重要な検討事項となります。そのため、既存の塗膜と新しいライニング材料の相互作用や接着力について、特別な配慮と技術的な検討が必要です。

当社では、接着が困難な状況にも対応可能な多種多様な接着プライマーを幅広く取り扱っております。特に、このような要求に応えるために、私たちは2種類の万能プライマーを提供しています:RS#66プライマーとRS#64プライマーです。

これらのプライマーは、ステンレスや亜鉛メッキなどの接着しにくい素材や、旧塗膜に対しても優れた接着力を発揮します。

是非ご検討ください。

樹脂ライニングで接着しにくい素地の代表例

樹脂ライニングで素地が鉄・コンクリート以外で、接着しにくい素材の代表的なものは亜鉛メッキ・ステンレス・旧塗膜の3つです。これらの母材(素地)は、そのまま樹脂ライニングすると、必要な密着性が得られませんので注意が必要です。

1:溶融亜鉛メッキ

  1. 溶融亜鉛メッキの特性:
    • 溶融亜鉛メッキは、製品を溶かした亜鉛の中に浸漬して、亜鉛皮膜を製品の表面に形成します。これは犠牲防食作用を提供し、製品が損傷を受けた場合でも、亜鉛が鉄より先に腐食することで基材を保護します。
  2. 腐食が進行した場合の対処:
    • 亜鉛メッキされた表面が想定外に腐食した場合、樹脂ライニングを施すことがあります。これは追加の保護層を提供し、腐食を防ぐためです。
  3. 樹脂ライニングの適用上の問題:
    • 亜鉛メッキの上に樹脂ライニングを施す際、腐食した亜鉛メッキに形成された白錆が問題となることがあります。白錆が完全に除去されない場合、ライニングの密着が不十分になる恐れがあります。
  4. ライニング材料との相性:
    • 使用されるライニング材料によっては、亜鉛メッキの表面との相性が悪く、密着しない可能性があります。特に、エポキシ塗料の硬化剤としてアルカリ性の強いストレートアミンを使用する場合や、不飽和ポリエステルを使用する場合は、反応して問題が生じる恐れがあります。

2:ステンレス

2-1.ステンレスの特徴

  1. ステンレス鋼の不動態皮膜:
    • ステンレス鋼は、表面に不動態皮膜(酸化クロムを主成分とする薄い膜)を形成し、内部が空気に触れないように保護します。これにより錆びにくい性質があります。
  2. ステンレス鋼の腐食:
    • ステンレス鋼も状況によっては腐食する可能性があります。特に強酸や強アルカリと長時間接触した場合、または硫化水素のような腐食性ガスが発生する環境(下水や廃水処理施設など)では腐食が進行することがあります。海中環境では局部腐食(孔食)、隙間腐蝕、異種金属腐蝕などが問題になることがあります。
  3. 樹脂ライニングの問題点:
    • ステンレス鋼の表面に形成される不動態皮膜は、樹脂ライニングを施す際に接着しにくい状態を引き起こします。これは、不動態皮膜が樹脂材料の密着を妨げるためです。

2-2.ステンレスと樹脂ライニングの密着問題

  1. 接着しにくい表面:
    • 樹脂や他のコーティング材料は、一般的に、高い表面エネルギーを持つ素材により良く接着します。ステンレス鋼の低い表面エネルギーと不動態皮膜は、樹脂がうまく密着するのを妨げる原因となります。
  2. 前処理の重要性:
    • ステンレス鋼に樹脂ライニングを施す前には、表面の前処理が非常に重要です。研磨や化学的な処理を行い、不動態皮膜を部分的に除去することで、表面エネルギーを高め、樹脂の密着を促進することができます。
  3. 適切なプライマーの使用:
    • 樹脂ライニングを施す前に、適切なプライマーを使用することも、密着性を向上させる重要な手段です。特定のプライマーは、ステンレス鋼の表面特性を変化させ、樹脂の密着を改善します。

ステンレス鋼に樹脂ライニングを施す際、その密着性に影響を与える主要な要因はステンレス鋼の不動態皮膜と低い表面エネルギーです。これらの問題を克服するためには、適切な表面の前処理と特定のプライマーの使用が必要です。これらの手順を適切に実施することで、樹脂ライニングの効果的な施工が可能になります。

亜鉛メッキやステンレスの密着問題は、塗装でも同じことです。プライマーでの解決策もありますが、塗装であれば熱可塑性樹脂の飽和ポリエステル粉体塗装では、良好な密着を得ることができます。

亜鉛メッキやステンレスの防蝕機能と、飽和ポリエステル粉体塗膜との2重防蝕となり、長期での保護が期待できます。

関連記事:

3:旧塗膜について

旧塗膜、特にプラスチック類の塗膜は、経年化により硬化し、新しい塗膜の密着が困難になる傾向があります。この現象を理解し、適切に対処することは、樹脂ライニング施工の成功にとって、とても重要なことです。

設備のメンテナンスでは、劣化しているとはいえ防蝕ライニングの旧塗膜を剥がすのは非常に大変です。客先から旧塗膜の活膜(密着に問題無く、保護膜として機能する塗膜)を残した状態での防食ライニングを依頼されるケースが多くあります。

3-1.旧塗膜の経年による密着性の変化

  1. 乾燥と経年化:
    • 時間が経過するにつれ、塗膜は完全に乾燥し、物理的および化学的特性が変化します。特にプラスチック系の塗膜は、経年によって硬化し、他の塗料やライニング材料が密着しにくい状態になります。
  2. 密着性の低下:
    • 経年化した塗膜は、その表面の化学的活性が低下するため、新しい塗料の密着が困難になります。これは、旧塗膜の表面が新しい塗料と化学的に結合する能力が低下するためです。

3-2.塗料の養生期間と塗重ね可能時間

  1. 養生期間の意味:
    • 多くの塗料の説明書に記載されている「養生期間」は、塗料が完全に乾燥し、最適な塗膜特性を発揮するまでの時間を指します。この期間内では、塗膜はまだ完全には硬化しておらず、化学的に反応する状態にあります。
  2. 塗重ね可能時間:
    • 説明書等に「塗重ね可能時間」という記載は、新たな塗料を重ね塗りするための最適な時間枠を指します。この時間内であれば、新しい塗料は既存の塗膜と良好に結合し、密着します。しかしその時間枠を超えると、塗膜が硬化し過ぎて新しい塗料との密着性が低下します。

3-3.密着性を高めるための対策

  1. 表面処理:
    • 経年化した塗膜に新しい塗料を施す場合、適切な表面処理(研磨やクリーニング)が必要です。これにより、表面の化学的活性を高め、新しい塗料の密着を促進します。
  2. プライマーの使用:
    • 特定のプライマーを使用することで、旧塗膜と新塗膜間の密着性を改善できます。プライマーは、表面特性を変化(改質)させ、新しい塗料が旧塗膜に密着しやすくします。

当社が推奨する防食ライニング専用プライマー(コンクリート用)の詳しい内容は、以下のリンクから確認ができます。

関連記事:

当社が推奨する防食ライニング専用プライマー(鉄面用)の詳しい内容は、以下のリンクから確認ができます。

関連記事:

RS#64プライマー

一般的な表面改善方法として、ブラスト処理やリン酸処理(化成処理)がありますが、これらにはコストがかかるというデメリットが存在します。特に化成処理は、専門の工場での施工が必要となるため、時間とコストの面で不利です。

防食ライニングの現地施工では、より効率的かつ経済的な手法が求められます。そのため、当社ではRS#64プライマーを薄く塗布し、その後乾拭きを行うことで表面改質を実施しています。この方法により、樹脂ライニングの密着性を高めることが可能となります。

RS#64プライマーの特長

RS#64プライマーは、密着しにくい旧塗膜の表面を改質し、エポキシ、ウレタン、ゴム、FRPなど、様々な下地に適用可能です。この表面改質剤を使用すれば、塗膜がしっかりと接着し、さらには厚膜のライニングを上塗りすることも可能になります。

RS#64プライマーは、樹脂ライニング作業を効率化します。SUSや溶融亜鉛メッキなどが母材の場合にも、表面改質剤として使用することも可能です。

RS#64プライマーの施工手順

  1. 下地表面に“余計な物”が付いていると剥れてしまいます。RS#64による下地処理(表面改質)をするため、付着物を全て丁寧に除去します。この作業が最も大事な工程となります
  2. 油脂類は溶剤、水分、付着物はサンダーや高圧洗浄等で除去します。
  3. 普通の油脂はアセトン、トルエン、キシレン等に溶けるので、これらの溶剤を使います。 アルコールでは油分は除去できないので注意が必要です。
  4. 汚れが付いていない頑丈で清潔な表面であるなら、溶剤拭きもサンダー掛けも不要です。
  5. 表面がきれいになったらRS#64を塗布します。RS#64の使用量は20g/㎡以下で十分です。
  6. 塗布後、必ず乾拭きを行ってください

以上で表面改質は終了です。この上に塗料や樹脂ライニングを行うことができます。

RS#66プライマー

密着困難な下地にも、RS#66プライマーであれば対応できます。この粘着系プライマーは、ステンレス、亜鉛メッキ、旧塗膜など、通常密着が難しい素材にも強力に接着し、塗装やライニング皮膜をしっかり支えることができます。

表面の処理(ケレン)の必要がなく、作業効率を飛躍的に向上させます。1液タイプのプライマーであり、取り扱いが容易なため、あらゆる施工現場での使用に最適です。

RS#66プライマーは、その優れた作業性により、塗装作業の時間とコストを削減します。しかし、適用にはいくつかの制限がありますので、使用前には仕様を確認してください。

  1. 熱がかかるような環境がある場合は使用できません
  2. 溶剤型の塗装やライニング材料を上に塗る場合は使用できません。弊社では無溶剤のエポキシ樹脂、RSJ#100との組み合わせで使用しています。

熱がかかる場合に使用するには、RS#64プライマーを選択します。

ポリウレアライニングの専用プライマーの開発

ポリウレアライニングは塗布後、数十秒で乾燥する作業性の良さと、専用の塗装機を駆使し、大規模な工事も短納期で行えるライニング工法です。しかしその反面、基材との長期安定密着性には課題がありました。

当社の防蝕ライニング専用プライマーを改良し、超厚膜にも対応できるポリウレアライニング専用プライマーの詳細は、以下のリンクから確認できます。

関連記事:

まとめ


弊社のRS#64プライマーとRS#66プライマーは、それぞれ独自の特性を持ち、塗装やライニング作業において優れた解決策を提供します。RS#64プライマーは、特に経年化した旧塗膜や様々な下地材に対して優れた密着力を発揮し、作業性を向上させます。また、RS#66プライマーは粘着系の特性を持ち、ステンレスや亜鉛メッキなどの密着が難しい素材に対しても強力な接着を実現します。

これらのプライマーは、表面処理の手間を大幅に削減することで、施工現場での時間とコストの節約に貢献します。1液型の簡単な取り扱いと、床のライニングなどの特定の用途における最適性も強調されています。ただし、製品の使用には制限があるため、仕様の確認が重要です。


腐食から大切な設備を守る

(株)RSテックは、防蝕ライニング専用の樹脂販売、防蝕設計、各種防蝕ライニング施工まで、一貫したサービスを提供しています。お客様のニーズに最適な防蝕対策をトータルにサポートいたします。

主なサービス内容

お気軽にお問い合わせください

防蝕対策に関するご相談は、(株)RSテックにお任せください。専門スタッフが、お客様のニーズに最適なソリューションをご提案いたします。

お問い合わせ

樹脂ライニングにおける密着の課題に対応するため、弊社ではプライマーを含む樹脂ライニングの材料を提供しています。各プロジェクトに適したソリューションを提供するため、素地の状態や予定している耐蝕材に関する詳細を事前に確認します。必要に応じて、特別に設計された接着剤の開発も行います。

お気軽にお問合せください。

関連記事>>RSJ#100無溶剤特殊エポキシ樹脂ライニングの詳しい解説はこちらから

関連記事>>コンクリート防食RSJ#100エポキシライニング工法の施工方法と注意点についてはこちらから

関連記事>>弊社の製品紹介はこちらから