廃液処理施設の防蝕ライニング:pH値と耐蝕材料の重要性

防蝕ライニングは廃液処理施設における長期的な設備保全に不可欠です。本稿では、pH値の監視がなぜ重要なのか、そして最適な耐蝕材料を選ぶ際の考慮点について詳しく説明します。

pH値は廃液の酸性またはアルカリ性を示し、その材料選定に大きな影響を与えます。化学工場や廃液処理施設では、多種多様な化学薬品に対する耐性が求められるため、耐蝕材料の選定は極めて重要です。中性のpH値であっても、混合液の性質により、幅広い耐性を備えた材料が必要となります。

この記事では、廃液の性質を正確に把握し、理想的な耐蝕材料を選択するための重要なポイントを提供します。私たちの企業は、多様な薬品耐性を持つ耐蝕材料を幅広く提供し、各施設に合った防蝕設計の実現を支援します。

ぜひ参考にしてください。

pHとは?

pHは、溶液の酸性またはアルカリ性の度合いを数値で表したものです。水素イオン(H+)の活性度に基づいており、pHスケールは通常0から14の範囲で示されます。pHが7のとき、溶液は中性とされます。pHが7より低い場合は酸性で、7より高い場合はアルカリ性(塩基性)とされます。pHの値が1単位変わると、水素イオン濃度は10倍の違いを意味します。

たとえば、pHが6の溶液は、pHが7の溶液よりも水素イオン濃度が10倍高く、より酸性です。一方、pHが8の溶液は、pHが7の溶液よりも水素イオン濃度が10分の1で、よりアルカリ性です。

pHの測定は、化学反応の制御、水質の監視、食品の安全性の確保、医学的な診断など、多くの科学的、工業的、環境的な分野で重要です。

pH値 液性
3.0未満 酸性
3.0以上 6.0未満 弱酸性
6.0以上 8.0以下 中性
8.0を超える 11.0以下 弱アルカリ性
11.0を超えるもの アルカリ性

工場から出る廃水

工場廃水は、製造プロセス、清掃活動、冷却システムなど、工場の様々な運用から生じる水です。この水には、化学物質、重金属、有機物、油脂などの汚染物質が含まれていることが多いです。これらの汚染物質は環境に悪影響を与える可能性があるため、工場廃水は通常、放出前に適切な処理を必要とします。

廃液処理設備に薬品耐性が必要な理由

化学工場では、さまざまな化学薬品が使用されています。これらの化学薬品は、酸性、アルカリ性、塩基性、有機、無機など、さまざまな性質を持っています。廃液処理施設では、これらの多種多様な化学薬品を含む廃液を処理する必要があります。

廃液処理施設が化学薬品に対する耐性を求められるのは、以下の3つの理由があります。

1.化学薬品による腐食や溶解を防ぐため

化学薬品は、廃液処理施設の設備や機器を腐食させたり、溶解させたりすることができます。そのため、廃液処理施設は、これらの化学薬品に対する耐性を持たせることで、設備や機器の損傷を防ぐ必要があります。

2.化学薬品の反応を抑制するため

化学薬品は、混ざり合うと反応を起こすことがあります。これらの反応は、有害なガスや爆発物が発生する可能性があるため、注意が必要です。廃液処理施設は、これらの化学薬品の反応を抑制する機能を持たせることで、安全を確保する必要があります。

3.化学薬品の環境への影響を抑制するため

化学薬品は、環境に悪影響を及ぼす可能性があります。廃液処理施設は、これらの化学薬品を適切に処理することで、環境への影響を抑制する必要があります。

具体的には、廃液処理施設では、以下の対策が行われています。

  1. 耐酸性、耐アルカリ性などの耐薬品性を備えた材料を使用すること
  2. 化学薬品の反応を抑制する薬品を添加すること
  3. 化学薬品を分離・回収する装置を設置すること

これらの対策により、化学工場の廃液処理施設は、多種多様な化学薬品に対する耐性を備え、安全かつ環境に配慮した廃液処理を実現しています。

廃液処理設備のメンテナンス: 耐蝕材料の必要性と選定基準

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: eaa938784eabfd872a8c46f2ee60b2f1.jpg

化学工場での廃液処理設備のメンテナンスにおいては、耐蝕材料の選定が非常に重要です。これらの施設では、さまざまな性質を持つ化学薬品が使用され、それらは酸性、アルカリ性、塩基性といった異なる化学的特性を持ちます。これらの薬品は設備に腐食や劣化を引き起こす可能性があるため、耐蝕材料には以下の特性が必要です。

耐蝕材料の選定ポイント

  1. 化学薬品への耐性:
    • 多種多様な化学薬品に対する反応性を理解する。
    • 腐食の種類(例:酸化、還元、塩素化)を識別する。
  2. pH値の考慮:
    • 溶液のpH値を測定し、その範囲に適した材料を選ぶ。
    • pHが中性でも、他の要因による腐食のリスクを評価する。
  3. 混合液の特性:
    • 混合される液体の種類とそれぞれの性質を分析する。
    • 混合液による複合的な腐食効果を考慮する。
  4. 材料の耐性範囲:
    • 耐酸性、耐アルカリ性、耐塩素性などの耐性範囲を確認する。
    • 温度や圧力などの運用条件下での材料の耐久性を評価する。

中性pH値の落とし穴

多くの場合、施設では酸性の廃水を中性に調整したり、中和するための薬品が用いられます。しかし、これらの処理によってpH値が中性に近づいても、実際には複数の化学物質が混合した複合液が存在し、予想外の腐食リスクが発生する可能性があります。

そのため、pH値だけを指標にした耐蝕材料の選定は危険をはらんでいます。中性のpH値が示されていても、その背後にある化学的複雑性を見落としてはなりません。耐蝕ライニングの選定においては、廃液の化学的構成を深く理解し、幅広い条件下での耐性を確保する材料を選ぶことが不可欠です。

廃液の耐性確認

実際の設備の廃液に、耐食材を塗布されたサンプルを浸漬して確認する方法は、工業や製造プロセスにおける耐性テストのひとつです。「実際の設備の廃液」とは、特定の工業プロセスや機械から出る実際の廃液を意味し、これは多様な化学物質や汚染物質を含んでいることが想定されます。

実際の廃液の完全な化学的組成を把握することは、非常に高度な分析装置と専門的な技術を必要とすることがあります。これが耐腐食テストにおいて、実際の廃液にサンプルを浸漬する方法が選ばれる理由の一つでもあります。実際の廃液でのテストによって、予測不能な要素や未知の変数に対する材料の耐性も確認することができるため、より現実的な耐性評価が可能になります。

実際の工業設備から出る廃液の化学的組成を完全に把握することは、いくつかの理由で困難な場合があります。

  1. 複雑な化学過程:
    • 工業プロセスは複雑で、反応過程で想定外の副産物が生成されることがあります。これらはプロセスの制御やモニタリングにもかかわらず、予測しにくいものです。
  2. 変動する運用条件:
    • 生産ラインの変動や、原材料のバッチごとの違いなどにより、廃液の組成が一定ではなく変動することがあります。
  3. 分析の難易度:
    • 特定の化学物質の検出や定量は、高度な分析技術を要することがあります。また、非常に低濃度の物質を検出することは特に難しくなります。
  4. 未知の汚染物:
    • 原材料に含まれていた未知の不純物がプロセスを通じて変化し、検出が困難な汚染物を生成する可能性があります。

実際の廃水設備の特定区画に耐食材を塗布て性能を確認する方法は、その耐性の正確な確認に非常に有効です。このアプローチは、特定の設備やコンポーネントの実際の使用条件下での耐腐食性能を測定するため、再現性が高く信頼性のある結果が期待できます。

また、耐食性だけでなく、圧力や摩耗といった複合的なストレス条件下での性能も評価することができます。これにより、実際の運用環境を模倣した条件下での材料試験を実施することができ、より現実的で実用的な確認ができます。

耐蝕エポキシ樹脂ライニング材料のご紹介

工場廃水設備は、多種多様な化学薬品に晒されるため、そのメンテナンスには特別な注意が必要です。RSJ#100エポキシライニングはアルカリ性から酸性までの幅広い薬品に対する高い耐性を持ち、工場廃水設備の保護において不可欠な役割を果たします。

耐蝕性エポキシ樹脂 RSJ#100の特長

  1. 水中硬化性と作業性
    • 水中でも湿潤環境でも問題なく硬化し、メンテナンス時の不測の事態に対応可能な優れた作業性
  2. 不透過性と耐摩耗性
    • 塗料に無機セラミックを特殊配合し、乾燥塗膜中に防蝕バリア構造を形成、不透過性と耐摩耗性を向上させています。
  3. 塗り工程で厚膜施工
    • 硬化収縮が少なく、FRPのようなガラス強化繊維の積層作業が無く、塗り工程で厚膜施工が可能
  4. 耐薬品性
    • アルカリ性から酸性まで幅広い薬品耐性があります。
  5. 追従性
    • 薬品耐性の強い硬いビニルエステル樹脂と比べ柔軟性があり、コンクリートや鉄素地に最適です。
  6. 接着性
    • 接着剤としても使用されるエポキシ樹脂の接着力は、RSJ#100の特長の1つです。

まとめ

工場排水の腐食性問題を効果的に対処するためには、広範囲にわたる化学物質に対する高い耐性を持つ防蝕材料の選択が不可欠です。複雑な化学組成を持つ廃液への対策として、実液浸漬試験や実設備への部分施工による耐性検証を推奨しております。

これにより、実際の運用環境での材料の耐久性が最も正確に評価されます。さらに、設備メンテナンスにおいては、既に劣化している可能性のある設備の状態を考慮し、施工性と補修性を重視した防蝕対策が求められます。

当社では、これらの要件を満たす多様な防蝕ライニング材を取り揃え、専門的な工法の提案を通じて、お客様の設備保全を全面的にサポートしております。

関連記事>>RSJ#100エポキシ樹脂ライニングの魅力・詳細についてはこちらから

関連記事>>RSJ#100の施工方法の解説についてはこちらから

関連記事>>コンクリート防蝕ライニングの種類はこちら