溶剤と無溶剤の塗料の違いについて説明、ライニング材料で選ぶなら無溶剤を選択するべき理由

現代社会では環境問題が重要なテーマとなっており、防食塗料の分野でもこの影響が顕著です。無溶剤型塗料は、VOCs(揮発性有機化合物)の含有量を極限まで減らすことで、環境への負荷を最小限に抑える効果があります。この塗料は高密度の塗膜を形成し、液体の浸透を防ぐことに優れているため、耐久性を重視する防食ライニング材料に最適です。

しかし、現実には溶剤型塗料が多く使用され、無溶剤型塗料は限られた用途での使用に留まっているのが実情です。なぜ溶剤型塗料がより一般的なのか?ここでは無溶剤型塗料の必要性とそのメリット、デメリットを詳しく解説します。

弊社では、防食ライニング材料として溶剤型と無溶剤型の両方を取り扱っています。両者にはそれぞれのメリットとデメリットがあり、状況に応じて使い分けています。特に腐食や劣化からの保護が求められる厳しい環境では、無溶剤型の材料を推奨しています。

この記事を通じて、ライニング材料としては無溶剤型を推奨する理由を解説します。ぜひ、参考にして頂き、環境に配慮しながら最適な防食対策を選択してください。

溶剤とは

溶剤は、他の物質を溶解させることができる液体で、溶けた物質と混ざり合って均一な液体(溶液)を形成します。溶剤は、その溶解能力により、化学反応の媒介、物質の分離や精製、そして清掃など多岐にわたる用途に使用されています。

塗料における溶剤は、塗料を適切な粘度に調整し、塗装時に均一に塗布できるようにするために使われます。塗料が乾くとき、溶剤は揮発し、塗料中の固形成分を残して塗膜を形成します。この塗膜は、塗装された物体の表面を飾ったり保護したりする役割を果たします。

塗料に用いられる溶剤には大きく分けて二つのタイプがあります。

  1. 有機溶剤:
    • これらは炭素を含む有機化合物で、揮発性有機化合物(VOCs)とも呼ばれます。有機溶剤は、塗料を希釈して塗りやすくする役割を持ちます。
  2. :
    • 水性塗料では、有機溶剤の代わりに水が使われます。水性塗料は、VOCの排出量が少なく、環境への影響が小さいという利点があります。

塗料の性質や用途に応じて、適切な溶剤が選ばれ、製品の性能や安全性、環境への影響を考慮しながら利用されます。例えば、外壁用塗料では耐候性や耐久性が求められるため、それに合った溶剤が選ばれることになります。また、室内用塗料では人の健康を考慮して低VOCまたは無VOCの製品が選ばれることが多いです。

強溶剤塗料と弱溶剤塗料

強溶剤塗料

強溶剤型の塗料はトルエン、キシレン、エステルなどの、強い溶解力のある溶剤が使用され、強い有機溶剤の臭いがします。

  1. 成分:
    • 強溶剤塗料には、蒸発速度が速く、揮発性が高い有機溶剤が含まれています。これにはトルエンやキシレンなどの強力な溶剤が含まれることが多いです。
  2. 乾燥速度:
    • 速乾性があり、作業効率が良いため、短時間で塗装作業を完了させることができます。
  3. 使用場所:
    • 通常は屋外や換気の良い場所で使用されます。その理由は、強い有機溶剤の臭いがするため、室内での使用は推奨されません。
  4. 耐久性:
    • 高い耐久性を持ち、特に産業用途や車両の塗装などに適しています。
  5. 環境への影響:
    • VOCの排出が多いため、環境への影響が大きいです。

弱溶剤塗料

  1. 成分:
    • 弱溶剤塗料には、蒸発速度が遅く、揮発性が低い溶剤が含まれています。これには鉱油炭化水素やアルコール類などが使われることがあります。
  2. 乾燥速度:
    • 弱溶剤塗料は乾燥に時間がかかるため、作業の進行が遅くなる可能性があります。
  3. 使用場所:
    • 換気の悪い室内や密閉された空間で使用されることがありますが、それでも十分な換気は必要です。
  4. 耐久性:
    • 強溶剤塗料に比べると耐久性が若干低いことがありますが、近年は技術の進歩により、弱溶剤塗料の耐久性も向上しています。
  5. 環境への影響:
    • VOCの排出量が比較的少ないため、環境に優しいとされますが、それでも無溶剤塗料に比べれば影響はあります。

これら二つの塗料は、用途によって使い分けられます。例えば、強溶剤塗料は高い耐久性を必要とする屋外の工業用途に適していますが、室内や環境への影響を最小限に抑えたい場合は、弱溶剤塗料が選ばれることがあります。

塗料に溶剤を入れるメリット、デメリット

塗料に溶剤を入れることには、いくつかのメリットとデメリットがあります。

メリット

  1. 塗布性の向上:
    溶剤を加えることで塗料の粘度を下げ、塗布が容易になります。これにより、均一な塗膜を作成しやすくなります。
  2. コスト:
    溶剤分が多いのでその分コストは安いです。

デメリット

  1. 環境への影響:
    揮発性有機化合物(VOCs)の放出は、オゾン層の破壊や大気汚染の原因となり得ます。
  2. 健康リスク:
    長期間にわたるVOCsの露出は、呼吸器系の問題や他の健康上のリスクを引き起こす可能性があります。
  3. 火災や爆発の危険性:
    多くの有機溶剤は可燃性があり、火災や爆発の危険が伴います。

塗料の用途や塗装される環境、耐久性の要求、安全性と環境への配慮など、多くの要因を考慮して適切な塗料の選択が行われます。

防蝕ライニング材料には無溶剤型塗料を推奨する理由

溶剤は物質を溶かす液体のことです。塗料で言うと、塗料を薄める液体です。強溶剤であれ、弱溶剤であれ、溶剤の入った塗料で塗布した場合、その溶剤分は揮発して硬化します。しかし溶剤を入れても全部揮発すれば、残ったものは無溶剤だと考えてはいけません。

溶剤は塗料を希釈するために用いられるが、その全量が揮発するわけではありません。一部の溶剤は塗膜内に残留し、その結果、塗膜が水分を吸収しやすくなり、水分透過を促進します。また、溶剤が揮発する際にできる空洞や残留する溶剤は、腐食性物質の侵入を容易にし、塗膜の強度を低下させます。

これにより、塗膜内に液が侵入すれば、塗膜内の応力(ストレス)が増加し、密着性にも悪影響を及ぼし、剥離の原因にもなります。そのため、溶剤型塗料は防食性能においてデメリットになる可能性があります。

つまり高い水準で環境遮断を求められる、防蝕ライニング材料において、溶剤型塗料は性能面での課題があると考えられ、無溶剤型を推奨することになります。

溶剤型塗料のデメリットに対して無溶剤型塗料が解消できる内容は以下の通りです。

溶剤型塗料のデメリット無溶剤型塗料による解消
残留する溶剤による水分透過の促進無溶剤型塗料は溶剤を含まないため、水分透過の促進がなく、塗膜が外部の水分を吸収するリスクが低減される。
揮発する際の空洞形成溶剤を含まないため、揮発による空洞が形成されず、腐食性物質の侵入が防がれる。
塗膜内ストレスの増加塗膜内のストレスが減少し、密着性が維持する。これにより、剥離のリスクが低下する。
防食性能の低下溶剤の存在がないため、塗膜がより高密度となり、分厚い保護層を形成することで、防食性能が向上する。

無溶剤型塗料のデメリットに対して溶剤型塗料が解消できる内容は以下の通りです。

無溶剤型塗料のデメリット溶剤型塗料による解消
高い粘度による塗りにくさ溶剤型塗料は溶剤の添加により粘度が低く、塗りやすい。これにより作業性が向上し、塗布が容易になる。
コストが高い溶剤型塗料は一般的に材料費が安く、また塗布に関しての専門性が低いため、全体のコストが低減される。

塗料の選択は、用途や環境、さらには腐食のリスクの度合いに応じて行うべきです。例えば、防蝕ライニングのように直接的な腐食要因にさらされる環境では、環境遮断の性能が高い無溶剤型塗料の使用が推奨されます。

これに対して、腐食リスクがそれほど高くない状況では、無溶剤型塗料を使用するとコストが過剰になり、経済的ではありません。そのため、よりコスト効率の良い溶剤型塗料が適しています。つまり、塗料の種類の選択は、その使用環境と要求される性能に基づいて慎重に行う必要があります。

無溶剤型塗料が高い環境遮断性能を提供する一方で、溶剤型塗料はコスト効率が良いため、状況に応じた適切な選択が必要です。

RSテックの無溶剤型塗料

弊社の無溶剤型塗料は、揮発性溶剤を含まない環境に優しい無公害塗料です。当社の製品ラインナップには、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂の3種類があります。

無溶剤型塗料は塗布時と乾燥後の厚みがほぼ同じに保たれ、揮発性溶剤を含まず、塗膜の気密性を維持して腐食原因物質の透過を防ぎます。当社の塗料は、樹脂に無機セラミックを豊富に配合し、乾燥後の塗膜内に配列させることで、防食性、耐久性、摩耗性、耐熱性を向上させる高性能バリア構造を形成します。

無溶剤型樹脂ライニングの種類は多岐にわたりますが、弊社は特にガラス強化繊維を積層させるFRPライニングや、無機フレーク材を配合したフレークライニングなど、塗り工程で完成する樹脂ライニングを中心に展開しています。これらの製品は、特定の用途において最適な防蝕保護を提供します。

まとめ

溶剤型塗料と無溶剤型塗料はそれぞれ独自のメリットとデメリットを持ち、適切な状況での使用が重要です。

溶剤型塗料は塗りやすく、速乾性があり、コスト効率が高いというメリットがあります。しかし、揮発性有機化合物(VOC)の放出や、残留する溶剤による腐食リスクの増加などのデメリットも存在します。

一方、無溶剤型塗料は環境に優しく、防食性が高く、密着性と耐久性に優れた厚膜ライニングを提供します。しかし、これらの塗料は高コストであり、施工には専門性が求められ、塗りにくいというデメリットがあります。

直接的な腐食要因にさらされる環境、特に腐食性のある薬品に直接触れる内面の防蝕ライニングには、環境遮断の性能が高い無溶剤型塗料の使用が推奨されます。しかし、塩害や一般的な外面の塗装に対しては、無溶剤型の厚膜ライニングは過剰スペックとなり、コストと納期の点で不経済になる可能性があります。

このため、弊社では耐食性が求められる用途には無溶剤型樹脂を使用し、一方でプライマーなどではコストと施工性を考慮して溶剤型塗料を使用しています。このような使い分けにより、性能と経済性のバランスを適切に保つことが可能です。

適切な塗料の選択は、その性能とコスト効率の両方を考慮した結果として行うべきであり、特定の用途や環境条件に応じて最適な選択を行うことが重要です。

ご質問やお問い合わせがあれば、お気軽にお問い合わせください。