私たちの周りにある構造物や設備は、時とともに腐食の脅威にさらされています。この現象から資産を守るためには、効果的な防蝕メンテナンスが不可欠です。しかし、その手法は一つではありません。
「塗装」と「ライニング」、これら二つの方法は表面を覆うことで共通して腐食から保護するものの、それぞれの役割と効果には明確な違いがあります。
塗装は比較的に薄い膜を形成し、マイクロメートル単位の厚さで物体を覆います。対照的にライニングは、分厚い膜を内部に施し、ミリメートル単位の強固な保護層を作り出します。耐久性に優れるライニングは、厳しい環境下でもその効果を長持ちさせることができるのです。だからこそ、どちらの手法を選ぶかは、設備の特性と経済的な側面をよく検討する事が重要です。過剰な保護は無用の出費を生み、不十分な保護は設備を危険な状態にします。
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ここでは、塗装とライニングの違いを詳しく解説することで、最適な防蝕対策が選択できる内容になっています。
ぜひ参考にしてください。
塗装とライニングは膜厚が違う
- 塗装とライニングはどちらも対象物の表面を錆や腐食から守るために使われる方法ですが、塗る層の厚さがとても違います。
塗膜の厚さと耐用年数の影響について詳しく解説した内容は、以下のリンクから確認ができます。
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1:一般的な塗装の膜厚
塗装は薄い層を何層にも重ねて行います。通常の塗膜厚は用途によりますが、約50マイクロメートル(μm)から、塩害など強い保護が必要な場合には200μm程度の厚さが一般的です。
200㎛~500㎛の厚膜塗膜が一度に得られる、塩害対策に最適な「飽和ポリエステル粉体塗装」については、以下のリンクから確認ができます。
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2:一般的なライニング膜厚
ライニング は厚い層を一度に作ります。1ミリメートル(mm)以上、時には2ミリメートル(mm)以上の厚さになることも珍しくありません。1ミリメートル(mm)は100マクロメートル(μm)の10倍の厚さですので、塗装よりもずっと厚く、強固な保護膜になります。
塗装は、美観重視の塗装から重防食塗装まで様々な用途に使用されます。しかし、特に過酷な環境での保護が求められる場合は、防食ライニングを適用する必要があります。防蝕ライニングは腐食保護だけでなく、物理的な摩耗や衝撃にも耐えるため、複合的な劣化要因にたいする対策に適しています。これは美観よりも機能性に焦点を置いた選択となります。
耐食性、防蝕性、物理的な摩耗や衝撃に対して、耐性を求められる防蝕ライニング工法の種類と選定については、以下のリンクから確認ができます。
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塗装とライニングの区別をするメリット
塗装とライニングはいずれも腐食防止という共通の目的を持っていますが、それぞれ異なる状況と要件に合わせて最適化されています。
メリット | 説明 |
---|---|
コスト効率 | 適切な表面処理を選択することで、過剰な初期投資や将来的な修理コストを避けられます。 |
耐久性の最適化 | 保護膜の厚さを環境に応じて最適化することで、長期にわたり効果的な保護が得られます。 |
性能の向上 | 正しい保護方法を選ぶことで、設備や構造物の性能が長く維持され、信頼性が高まります。 |
環境適応性 | 特定の化学的、物理的条件に最も適した保護方法を選択することで、その環境に特化した保護が可能になります。 |
メンテナンスの効率化 | 適切な防蝕方法を選択することで、適正なメンテナンス時期の計画ができ、運用の効率化が図れます。 |
このように、塗装とライニングの違いを理解し、適切な方法を選択することで、コストの最適化、耐久性の向上、メンテナンスの効率化といったメリットが得られます。
塗装とライニングの用途の違い
防蝕塗装と防食ライニングは、ともに腐蝕から保護するための方法ですが、その用途や適用される環境に違いがあります。
防食塗装の用途
防蝕塗装は、鉄やその他の母材表面に薄い膜を塗り重ねることで形成し、腐蝕を防ぎ、美観を重視します。以下はその主な用途です。
- 建築物や構造物の外壁など
- 車両や機械の外部
- 橋や鉄塔などの鉄骨構造
- 配管やタンクの外部
これらの用途では、腐食の原因となる外部からの影響を防ぐためや、美観をよくする目的として施されます。
金物の塩害対策に最適な飽和ポリエステル粉体塗装は、優れた塗着効率で耐食性のある厚膜形成が簡易にできます。以下のリンクから確認ができます。
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縞鋼板(チェッカープレート)の塗装は、その形状から難易度の高い塗装となります。縞鋼板の防蝕設計は以下のリンクから確認ができます。
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防蝕ライニングの用途
防蝕ライニングは、主に腐蝕環境がより厳しい環境に対して、分厚い膜を形成し、環境遮断を目的として施されます。以下はその主な用途です。
- 化学プラントや精製所の反応容器や貯蔵タンク
- 廃液、排水処理施設の汚水タンクや配管、槽、排水溝、など
- 食品や飲料の貯蔵タンク
- 酸やアルカリなどの腐食性物質を扱うコンクリート槽や鋼製タンク、防液堤など
外部に液が漏れ出ることを阻止する防液堤は、使用されている化学薬品や有害物質に対しての耐性が必要です。防液堤の防蝕ライニングについての詳しい内容は、以下のリンクから確認ができます。
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排水槽の防蝕ライニングの必要性と、各種ライニング工法の紹介は以下のリンクから確認ができます。
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これらの用途では、防食性、耐食性、防水性、耐摩耗性、耐衝撃性などが求められ、防蝕ライニングが施されます。
このように、防蝕塗装と防蝕ライニングは、腐蝕から保護するための手段として共通していますが、適用される環境や目的が異なります。
塗装仕様とライニング設計の考え方の違い
防蝕塗装と防蝕ライニングは、設備や構造物を腐蝕から保護するための二つの異なる方法です。以下のように、これらのアプローチの違いを簡単に説明します。
塗装は、物をさびさせないためや、見た目をきれいにするために行います。しかし、塗装だけでは耐えられないほど厳しい環境で使われるのが防食ライニングです。
- 防蝕塗装の仕様:
- 防蝕塗装は、特定の標準仕様に従って行われることがあり、例えば塩害仕様や重防蝕仕様などがあります。これらの仕様は、特定の環境条件(例えば、塩分の多い環境や特に腐蝕性の高い環境)に対応するように設計されています。)
- 防蝕ライニング仕様:
- 防蝕ライニングは、設備の特定の環境条件に対応するために個別に設計されることが一般的です。これは、メンテナンスが主流であり、それぞれの設備や状況に対して個別の防蝕設計が必要であるためです。
- 例えば、同じ設備でも、環境条件(例えば、化学物質の露出レベルや摩耗など)によって、防食ライニングの仕様や膜厚が変わる可能性があります。
防蝕塗装は、特定の既存の仕様に従って行うことが可能ですが、防蝕ライニングはよりカスタマイズされたアプローチをとり、設備の環境に応じて個別に防蝕設計を行う必要があります。これにより、設備の特定の環境条件に対する最適な保護を提供することができます。
化学工場では、様々な薬品が使用され、設備の用途に応じた防蝕設計が必要となります。以下のリンクから詳しい内容を確認ください。
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まとめ
防蝕対策は、設備や構造物を腐食や劣化から守り、その寿命を延ばすために不可欠です。特に、防蝕塗装と防蝕ライニングという2つの主要な方法があり、これらは膜厚、使用目的など用途により選定されます。
防蝕塗装と防蝕ライニングの違いを理解し、それぞれを適切に使い分けることで、不要なコストをかけずに設備を安全に長持ちさせることができます。設備の必要とする防蝕レベルと予算をしっかりと評価し、最適な防蝕方法を選ぶことで、保護の効果を高めつつコストを抑えることが可能です。
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